株式会社と個人事業のメリット・デメリット
株式会社を新規設立するべきか、あるいは個人事業として開業すべきか判断に迷われる方もおみえになられると思います。ここではそれぞれのメリット・デメリットを表形式で解説したいと思います。
| 比較論点 | 株式会社 | 個人事業 |
|---|---|---|
| 法的責任 | 有限責任。但し個人保証をした場合無限責任です。 | 無限責任です。 |
| 事業年度 | 決算日は自由に決定できます。 | 必ず1月1日~12月31日です。 |
| 欠損金 | 7年間繰越控除が可能です。 | 青色申告は3年間繰越控除が可能です。 白色申告は繰越控除不可です。 |
| 消費税 | 基準期間(2年前)の売上高が1,000万円以下であれば免税です。また資本金1,000万円未満の法人は、設立後2年間免税です。資本金1,000万円以上の法人は設立当初2年間免税されません。 | 基準期間(2年前)の売上高が1,000万円以下であれば免税です。また開業後2回目の12月31日までは免税です。 |
| 税率 | 比例税率です。 | 超過累進税率です。 |
| 赤字の場合 | 均等割りが課税されます。 | 非課税です。 |
| 経理処理 | 複式簿記による記帳が義務です。 | 簡便な処理が認められています。 |
| 登記等 | 登記が必須。設立費用が数十万程度かかります。 | 登記は不要。税務署等への開業届出だけで良いため、費用はかかりません。 |
| 信用力 | 個人と比較して高くみられます。 | 法人と比較して低くみられます。 |
| 代表者に対する給与 | 給与として費用計上できます。 | 必要経費として認められません。 |
| 家族従業員に対する給与 | 給与として費用計上できます。 | 同一生計親族への給与は青色事業専従者給与又は事業専従者給与としてのみ認められます。 |
| 代表者・親族等に対する退職金 | 代表者、親族に対する退職金は費用計上できます。 | 事業主及びその親族に対する退職金は必要経費とは認められません。 |
| 減価償却 | 任意償却。赤字の事業年度は減価償却しなくても結構です。 会社所有の車の減価償却費は全額費用計上できます。 |
強制償却であるため、赤字の年も減価償却しなければなりません。 個人所有の車の減価償却費は税務上一部否認される可能性があります。 |
| 交際接待費 | 資本金1億円以下の法人は1事業年度で600万円までは10%損金算入できない。600万円以上の部分は全額損金算入できません。 | 原則的には全て必要経費として認められます。 |
| 社会保険 | 事業主や家族も社会保険に加入できます。 | 事業主や家族は社会保険に加入できません。 |
| ドメイン | 「.co.jp」が使用できます。 | 「.co.jp」が使用できません。 |
| 剰余金 | 事業で稼いだ剰余金を個人で使用できません。 | 事業で稼いだ剰余金を個人で使用できます。 |
| 事業税 | 原則全ての収益事業に課税されます。 | 地方税法に限定列挙された業種のみが課税されます。事業主控除290万円がありますので、所得金額290万円以下であれば法人化は時期早尚です。 |
個人開業・会社設立と消費税の基礎知識
2期前の売上高(消費税法で「基準年度」という。)が1,000万円を超えると消費税の納税義務の有る課税事業者となりますが、売上高が1,000万円以下であれば納税が免除される免税事業者となります。
個人事業で開業した場合、2期前の売上高は0円ですので、最初の2年間は基準期間の売上高が0円、すなわち1,000万円以下と判定され消費税の納税が免除されます。
そして個人事業で2期が終了する段階で会社を設立します。以前は株式会社を設立する場合には資本金を1,000万円以上にする必要がありましたが、現在は会社法により資本金は1円でも良いことになっていますので、この会社の資本金が1,000万円以下の場合、会社としての2期前(基準期間)の売上高は0円ですので、会社設立後2事業年度は消費税の納税が免除される免税事業者になります。
すなわち、最大で4年間免税事業者になることが可能になってきます。ただし、個人事業の開始が年の途中であった場合、1年数ヶ月しか免税事業者になりませんし、個人事業を引き継いだ会社の決算日を12月31日ではなく年の途中に設定してしまうと免税事業者となる期間が1年数ヶ月に短縮されますので、結果として合計で4年未満の期間しか免税事業者となりません。これが最大で4年間と申し上げた理由です。
また、会社設立時に資本金を1,000万円以上にしてしまうと設立1期目から課税事業者として消費税の納税義務がありますので、最大4年間の免税事業者となるには資本金が1,000万円未満の会社を設立しなければなりませんので注意が必要です。したがって、特別の理由が無い限り、資本金は1,000万円未満にした方が良いと考えられます。
法人の設立日・決算日の決定
(1)消費税
資本金の決定の際にお話しました通り、資本金が1,000万円未満の新設法人は、2事業年度の間消費税が免除されます。例えば、4月1日に設立した法人が3月31日を決算日とした場合、2年間消費税が免除されることになります。4月30日を最初の決算日とした場合、1年1ヶ月しか消費税が免除されません。
したがって、法人の設立日から最初の決算日までができるだけ1年に近くになるよう決算日を決定するか、又は予定している決算日から12ヶ月前に法人を設立するようにしたほうが良いと考えられます。
(2)資金繰り
業種によっては、月ごとの売上金額に大きな差がある場合があります。例えば3月に売上が多い法人であった場合、3月末日を決算日にしてしまいますと、決算月に会計上は大きな利益が発生し、これに伴い法人税・消費税が増加します。しかし、現金売上だけなら良いのですが、売掛金又は受取手形等の現金化には時間がかかりますので、決算日から2ヵ月後の5月末日の法人税・消費税の納付期限に納税資金が不足するような結果になりかねません。
逆に4月に売上が多い法人が3月末日を決算日とした場合、4月の売上に対する売掛金又は受取手形等は、決算日時点では既に現金化されていますし、売上の多い4月から翌年5月末日の法人税・消費税の納付期限までに時間がありますので必要な納税資金を用意するための余裕を持つことができます。
つまり、月ごとの売上に大きな差がある法人は、売上の多い月が事業年度の初めの方になるよう決算日を設定していくことが納税資金の確保という資金繰りの観点から重要になってくるのです。
(3)棚卸在庫
決算日には棚卸を行い、在庫の数量・金額を確認する必要があります。在庫が多い月を決算日にした場合、棚卸にかかる労力が多大になってしまう可能性がありますので、在庫が少ない月に決算日を設定するというのも一つの考え方です。
(4)均等割り
法人を設立した場合、仮に赤字でも、少なくとも法人県民税2万円・法人市民税5万円・合計7万円の均等割りと呼ばれる税金を納付しなければなりません。均等割りは事業年度が12ヶ月未満である場合、1ヶ月未満の端数を切り捨てとする月割計算になります。したがって法人設立日を月の初日ではなく、月の2日以後にすると均等割りの年額の12分の1が節税できることになります。
会社設立費用
会社の設立には様々な費用がかかります。この費用は創立費と呼ばれ、法人登記に関する司法書士報酬、登録免許税、公証人役場における定款認証代金、定款の印紙代(オンライン申請の場合は不要)などがあります。
創立費は、繰延資産として資産計上し、その後償却費という形で費用計上します。法人税法上は任意償却ですので、全額を一回で償却して費用計上することができます。また、一部を費用計上し残額を繰延資産として資産計上することもできますし、全額を繰延資産として資産計上し、費用計上はしないこともできます。
創立費を費用計上した事業年度は、費用計上した金額だけ利益が減少しますので、その事業年度の節税となります。したがって会社が黒字になるまで費用計上せず、繰延資産として資産計上したままにすることもできます。
ただし、会社法では創立費を設立後5年以内に償却するよう規定していますので、会社設立後5年以内に償却し費用計上して下さい。
また、赤字の会社が費用計上した場合、7年間は繰越欠損金として黒字と相殺して節税効果をもたらすことが可能ですが、7年を過ぎると繰越欠損金として黒字との相殺ができなくなるので注意して下さい。
